24 夜空に昇る月

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 魔女の支配を受けた者は、別の魔女の支配は受けない。  だが、魔女が相手に特定の意識を植えつけることができるのならば、逆に相手から特定の意識を消し去ることはできないだろうか──輝きわたる月がかぼそい星の光を消してしまうように。  その思いつきを、フェリサはフェリシアンで試した。 「イドリク兄上も、父上も、カミール兄上も、しばらくは少し妙な感じで暮らすことになるかもしれないけれど、そこは我慢して頑張ってもらわないとね」  フェリサの魔女の歌を聞いた三人は、リーヌスが耳からパンをとりのぞいた直後、一瞬の眠りから目を覚ました。  催眠剤の影響が残るイドリクだけはまだ眠そうだったが、彼らは自分が眠ったということにも気づいておらず、そしてきれいに魔女のことを忘れていた。  ──では、イドリク兄上の楽しい冒険譚の前に少々お時間をいただいて、僕とフェリサの結婚についてご説明します。  なぜ自分たちはここでこんな話を聞くことになったのだろうか、という疑問を彼らは顔に浮かべたが、行儀よく黙っていた。  そしてリーヌスの雄弁な主張のあと、父王は苦い顔をし、長兄は頭を振り、そして三兄はあきれ顔になった。
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