24 夜空に昇る月

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「魔女の記憶を忘れるよう、声に込めました。正直なところ、どこまで効果があるのかはわかりませんけど、できれば一生──」  フェリサは月を見上げた。  正直なところ、少し悩んだ。  人の意識ではなく記録に残ってしまっている以上、リーヌスが自分と結婚してしまったということは消しようがない。  貴賤婚だけでもかなりの恥なのに、さらにその妃に逃げられたとなったら、貴族どころか庶民からも後ろ指はまぬがれない。  リーヌス自身も、自分はどうしてこんなばかな真似をしたのかと一生後悔するだろう。 (でもそこは、我慢して頑張ってください──あなたならたぶん、なんとかしますよね、リーヌスさま)  ただの王宮騎士だったとしても、彼の妃など務められない。  まして自分は魔女だ。  この先、万が一そのことが周囲に知れてしまったら、ベルトゥス大公国の書庫で見たような恐ろしい迫害に彼を巻きこむことになる。  フェリサはさりげなく、歌のために息を入れた。
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