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1 舞踏会の夜の悪夢
天井からはいくつもの水晶のシャンデリアが吊り下がり、まばゆいばかりにきらめいている。
金と銀と大理石で造られた大広間も輝きを増す。
花の香りのなかに集うのは、これでもかとばかりに着飾った貴族たちだ。
楽隊の奏でる旋律に笑いさざめきながら身をゆだね、ときに近づき、ときに離れ。
さながら春に舞う蝶だった。
(早く終わってくれないかな……)
そんな華やかな大広間の壁ぎわで、王宮騎士フェリサは目配りをしながら願っていた。
生まれを問わない騎士養成校を卒業して二年目。
この舞踏会に恋と結婚を賭ける、同じ年ごろの貴族令嬢とは違う。
笑顔と会話を売りこむことではなく、主人たる王族の安全を身を挺してでも守ることがフェリサの仕事だ。
ただ、問題はその主人で──。
(うわ、来た!)
きゃあきゃあと黄色い声が近づいてきて、フェリサはうんざりしながら目をやった。
群がる令嬢たちから、つややかな赤銅色の髪の頭が飛び出している。
あちらを向きこちらを向きしていたその頭は、フェリサに向いた途端ぴたりと止まった。
「ああ、こんなところにいた! 捜したよ、フェリサ」
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