本当に必要なもの

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「……あの日、なんで俺があげたジャケット着てたの?」 「あ」 「あ?」  火照った身体が醒めてきた頃、新堂さんに聞いてみるとなにかを思い出したような声を上げてベッドから出る。 「……」  「俺の腕の中から出るの禁止」とか言ったくせに自分から離れた……。軽くショックを受けていたら、置いてあった紙袋を俺に差し出す。 「あれ着たら小越が喜ぶかなと思ったから」 「え……」 「おまえが喜ぶことしたかったんだよ……言わせるな」 「……」  なんだろう、この人も充分かわいい気がする。差し出された紙袋を受け取ると、見てみろ、と言われて中に入っているラッピングされた箱を出す。包み紙をそうっと解いていき、出てきたのは――。 「やる」 「ジャケット……」  なんだか高そうなジャケットが箱の中に入っている。 「すごい……俺こういうのすごく好き」 「小越はそういうのが似合うかなと思って選んだ」 「ありがとう。そうだ、なにかお返し――」 「いらねえ。どうしてもって言うならおまえを寄越せ」 「えっ」  どういう意味、と新堂さんの顔を見ると微かに頬を赤らめている。こんな表情初めて見たからどきどきしてしまう。 「もしかして、お姉さんからアドバイスもらったの?」 「そう」  今度はそっけない返事に笑ってしまう。 「『流行りものが好きな人に流行りものあげてどうするの』って言われた」 「それのなにが悪いの?」 「『むしろ流行りものより自分に夢中にさせるべきでしょう。自分色にしてしまいなさい』、だってさ。目から鱗だった」 「……」  すごいお姉さんだ……。 「というわけで、これから小越には俺に夢中になってもらって、俺の色にするから」  微笑む新堂さんがまた俺に覆いかぶさり、肌にキスを落としていく。  もうとっくに新堂さんに夢中だけど、それはまた後で言おうかな。そっと背中に手を回し、心も身体も委ねた。 END
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