本当に必要なもの

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「あ……はぁ、あ……」 「おまえ、いい加減にしろ」 「……?」  なにか怒ってる? 「……かわいすぎ」 「!」  力が入らないときにそういうことを言うのは反則だ。反応ができない。頬が燃えるように熱くなり、新堂さんから目を逸らしたら今度は笑われた。 「ほんとに勘弁してくれ。そういう反応とかたまらない」  じゃあどうしたらいいんだ、と聞きたいけれど、聞いたらそれをしなければいけない気がして聞けない。そんな考えを読まれたのか、新堂さんがくっくっ、とおかしそうに声を押し殺して笑っている。 「そのまま力抜いてろよ」 「……っ」  新堂さんの指が奥まったところに触れ、ゆっくりと入ってきた。違和感に眉を顰めたら、眉間にキスをされた。 「痛かったらそう言え」 「うん……」 「やめるかわかんねえけど、なるべくやめる」 「なにそれ」  すごく新堂さんらしくて笑ってしまう。すると中に入った指の形がはっきりわかり、耳まで熱くなる。ゆっくりそこをほぐされ、指が増やされたのがわかった。気持ちいいかと聞かれたら違和感しかないから答えられないと思っていたら、指が一点を掠めた途端、痺れるような感覚に身体が跳ねた。 「あ、あ!」 「ここか?」 「だめ、そこ……おかしい……あっ」  同じところを繰り返し撫でられる度に襲ってくる快感にくらくらする。身体は言うことを聞かず、その快感に従順に反応している。 「いいならいいって言えよ」 「やっ……いい、きもちい……っ」 「……素直なのはかわいすぎる」 「あ、んっ……はっ、ああっ……」  また身体が熱く昂っていくのが恥ずかしくて、それさえも気持ちよくて。ただ乱れる俺を新堂さんがじっと見ているのがわかる。視線が全身に絡みついていて、俺を更に熱くする。  指がまた増やされて同じところを刺激される。もう力が入らなくて、ただ喘いでシーツに皺を作り続けた。 「もう無理」 「っあ……んっ」 「我慢できねえ」  指が抜かれ、脚の間に新堂さんが身体を入れる。もうこれ以上は無理かもしれない俺の中に、昂りがゆっくり入ってきた。息が詰まってしまい、新堂さんがキスをくれる。舌を絡められてキスに意識が移る。甘いキスに脳まで蕩けていると新堂さんの下腹部がぴたりとくっついていた。 「大丈夫か?」 「んぁ……、ん……」  一つ頷いて新堂さんの背に腕を回す。肌が触れ合うのがとても気持ちよくてどきどきする。もっとこの人を知りたい、と背に回した手にぎゅっと力をこめた。 「小越、初めてじゃねえの?」 「初めてだよ?」 「じゃあそういうかわいいこと、どこで覚えた?」 「かわいくないよ……」  新堂さんのにおいがする。柔らかくて優しい、落ち着くにおい。髪を撫でられて気持ちよさにうっとりしていると新堂さんがゆっくり動き始めた。 「あっ……だめ、おかしい……っ」 「だから早いって」 「だって、きもちいい……おかしい……っ」 「おかしくねえよ。俺は小越を気持ちよくさせたいんだから、全然おかしくない」  先程指でいじめられたところを昂りが擦るとびりびりとした快感が全身を駆け抜ける。先端が奥に当たっても違う快感があって、なにをされても気持ちいい。 「だめ、だめ……もうイく……っ」 「いいよ、何回でもイけ」 「ああっ……」  がくんと身体が強張って弛緩する。腹に散った白濁を新堂さんが指で撫でる。 「すげえかわいい……」 「しんどう、さん……好き」 「そうやって煽ると知らねえぞ」 「あおってないし……」  ぐっと一際深く穿たれて背が仰け反り、自分でも驚くほど甘い声が出た。揺さぶられる度に声が押し出されていく。新堂さんが俺の腰を膝の上にのせる体勢になり、脚が大きく開いた。深いところを動かれ、新堂さんがぐるりと腰を回すと中を余すところなく擦られて、またあられもない声が唇から溢れた。 「だ、め……それいい……っ」 「いいなら、だめじゃねえじゃん」 「ああっ……」  腰ががくがくして一瞬の浮遊感の後、目の前が明滅する。不規則に震える身体がもう言うことを聞かない。 「またイッたか?」 「わか、な……い」 「もっとよくなれ……俺から離れられなくなるまで」 「ひあっ……あっ……あ……」  もうとっくに離れられないのに、これ以上なんてどうしたらいいんだろう。新堂さんにしがみ付き、快感に呑み込まれていく。どう動かれても気持ちよくて本当におかしくなりそうで怖い。それでももっと欲しい。 「新堂さ……っ、あっ……ああっ……」  せり上がってきた快感に頭まで丸呑みにされてしまう。肌に熱い手が這い、胸の尖りをまた舌で転がされ歯を立てられて、引かない波は押し寄せ続ける。 「も、だめ……イく、イッちゃ……あっ」 「俺ももたねえ」 「あっ、あ、んっ……んんぅ……っ」  新堂さんの動きが速くなり、荒々しく唇が重ねられた。喘ぎも呼吸も、意識まで絡め取られながら達すると、中の昂りも膨張してどくどくと脈打った。噛みつくようにされたキスが甘く蕩けるようなものに変わっていき、息が乱れているのも忘れて吐息を交わらせる。 「おまえ、俺の腕の中から出るの禁止」 「え……?」 「……こんなかわいいのが外歩いてたら危険すぎる」 「なにそれ」  おかしなことを言う新堂さんに笑いを零すと、ちゅっと口づけられそれまで食べられてしまった。俺をかわいいなんて言うのは新堂さんだけだ。それだけでもくすぐったいのに、腕の中から出ないなんて幸せすぎてすぐに正気でなくなるだろう。ぎゅっと抱きつくと、力強く抱き寄せられた。
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