あの夕焼けの日に

2/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
でも、それでもいいかもしれないと、スローモーションのような景色を見ながら考えた。 ここで死んだらこの底知れぬ恐怖から、 怯えから、救われるかもしれないと。 そう考えた刹那、 女性に飛びかかる一つの影。 ハインが女性と取っ組み合い、拘束しようとしていたのだ。 ノッツはそれを呆然と見つめて、ハインの泣きそうな声で我に帰った。 『ごめん。やっちゃった。どうしよう。』 今まで見せたことのない焦燥に駆られた、動揺しているような、そんな顔でそう言った。 彼の足元には血まりができていて、取っ組み合いによって刺したのだろう、女性の体にはいくつもの刺し傷と腹に包丁が刺さっていた。 ノッツは状況を理解しようと頭を働かせて、それで何が起こったのか分かった瞬間、返り血がつくのも構わずに、 空も、地面も、視界の全てが赤に染まる中、ノッツはハインを抱きしめた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!