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5ー3 2回目
着替えている俺を見てカルゼは、傷ついたような顔をして俺を見つめていたけど、俺は、夕べカルゼが脱ぎ捨てたヤーマン老の服を拾い集めると彼に手渡した。
「はやくこれを着て!」
速くしないとルトが来ちゃう!
きっと、いつまでも起きてこないから心配してる筈だ。それに、カルゼの方だってヤーマン老の護衛の人たちが待ってる筈だし。
俺に急かされてカルゼは、のろのろとヤーマン老の服を身に付けていくが、服が小さすぎてうまく入らない。しかもところどころ破れてるし!
結局、俺は、アンリの執務室へ行って適当に誤魔化して彼の服を借りることにした。アンリは、いぶかったが俺は、笑って誤魔化した。
アンリの服を身に付けながらカルゼは、まだ、俺を不服そうに見ていた。だが、俺は、決して態度を崩そうとはしなかった。
服を着終わってもカルゼは、まだ俺を何か言いたげな表情で見ていたがため息をつくと、しゅぅっと体を縮める。
次の瞬間には、もう、もとのヤーマン老の姿に戻っていた。ヤーマン老には、アンリの服は、ぶかぶかで俺は、慌ててヤーマン老のダブついたズボンの裾を折りあげた。
ヤーマン老は、シャツの袖をたくしあげながら俺に少し寂しげな笑みを浮かべて見せた。
「また、今夜、来る」
「ああ」
俺は、頷いた。
俺は、娼館の玄関までヤーマン老を見送った。去り際にヤーマン老は、俺の腕を掴むと引き寄せ頬にちゅっとキスをした。
「昨夜は、楽しませてもらったよ。今夜も来るからよろしく頼む」
なんだか悲壮さすら漂うヤーマン老の後ろ姿を見送ると俺は、部屋へと戻った。
部屋には、すでにルトが風呂桶を用意してくれていた。俺は、服を脱ぐと湯気の立つお湯へと体を沈めていった。
「ずいぶんお楽しみだったようだな」
ルトがベッドのシーツを交換しながら嫌みのように言うので俺は、顔が熱くなり頭までお湯の中に潜り込んだ。
カルゼ
俺は、湯の中で目を閉じたまま考えていた。
また、会えるなんて思ってもいなかった。
というか、俺、これが2回目の転生だったわけ?
1回目は、前世、異世界人だったときの俺。
その前がカルゼの探していた月の神だったリュカのときの俺。
俺は。
今生では、もと大魔法使いで、今、男娼である俺は、カークが好きで。
でも。
もともとの俺は、カルゼの番だった。
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