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5ー8 朝の別れ
翌朝。
快い気だるさを感じながら俺は、目覚めた。
「起きたのか?」
目の前にカルゼの美しい顔があり俺は、顔が自然と笑みになる。カルゼの腕の中に抱かれ俺は、頬をカルゼの胸に埋めた。
しばらく俺たちは、激しい夜の名残を楽しんでいたが、いつまでもそうはしていられない。俺は、カルゼの唇にそっとキスをすると彼の腕から抜け出した。
俺が身支度を始めると、カルゼもしぶしぶ起き出した。
カルゼは、ヤーマン老の姿に戻ると服を身に付けていった。
俺は、ルトに合図を送る。しばらくするとルトが2人分の朝食を持ってきてくれた。
俺とヤーマン老は、テーブルに向き合って座ると朝食を食べた。
朝食後、ルトがいれてくれたお茶を飲みながら俺は、ヤーマン老に話した。
「俺は、まだあなたと行けない」
「なぜ?」
ヤーマン老は、眉をつり上げる。
「なぜ、私を拒むんだ?ルシウス」
「拒んではいない。ただ、俺は」
俺は、しっかりとヤーマン老を見つめて話した。
「俺は・・人として生まれた。そして、人としてこの生を生きていきたいんだ」
ヤーマン老は、俺を黙って見つめていた。俺は、話し続けた。
「だから、あなたと一緒には、行けない」
「ルシウス」
「いつか、また、あなたを愛するかもしれないし、もしかしたら他の誰かを愛するかもしれない。けど、俺の魂は、あなただけのもの、だ」
俺の言葉をきいていたヤーマン老は、にっこりと微笑んだ。
「ならば、私のものにしたらいいといいうことだな、ルシウス」
ヤーマン老が帰っていくのを俺は、玄関まで見送っていった。ヤーマン老は、俺の唇に口づけした。
「また、くるよ、ルシウス」
「はい。お待ちしています、ヤーマン様」
ヤーマン老を見送った後、アンリが俺の頭をぽんと撫でた。
「思ったより、いい男娼になってきたな、ルシウス」
アンリは、俺に笑いかけた。
「いい朝の別れだった」
俺は、自分の部屋へと戻るとテーブルに向かいペンをとってシャルへ手紙を書き始めた。
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