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黙したままに、アルフとレイナは眼前の冒険者を見つめ続ける。そうして数秒の後、ヴィクターは諦めたように深い息を吐き出すと、先程よりも小さな声で語り始めた。
「俺はずっと、退屈してたんだよ」
「退屈……? 冒険者の仕事が、ですか?」
「いや、まあ、この仕事自体は好きだぜ。嫌なことだってもちろんあるけどよ。色んな依頼があって、全然飽きねえ。俺の性分に合ってる。これからもずっと続けてくんだろう。だが、俺にはもう、冒険者を続ける上での目標みたいなもんがないのさ」
ふぅ、と溜め息を一つ吐き出して、冒険者は更に続ける。
「この仕事を始めたばっかの頃はこうじゃなかった。それこそ冒険者として名を上げてやろうって、どんな依頼も必死になってこなしてたもんだ。だが、それなりに名が売れた今となっちゃあ、ただ生きてくためだけに仕方なくやってるって感じがする。何か、物足りねえんだよ」
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