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学園祭30分前・2
着替えて、教室の外に出ると、
「きゃー!!」
羽織袴姿の、女子たちの悲鳴。
「どうしたの? 吉高だけ、めちゃくちゃカッコいいじゃん!!」
「うん。なんだかね、おれもよく、わかんないんだけど―――」
「吉高、写真写真!!」
吉高は、とたんに女子たちに囲まれてフラッシュの嵐。僕は取り残される。と、
「長野くん」
ありか!! うわー!!
ありかちゃんの桜の柄の羽織袴姿、めちゃくちゃ可愛い!! 明るくからっとした感じの彼女が、今日は楚々とした感じ。なんか、ショートの髪につけてるピンクの花の飾りが顔色をより明るく見せ、頬を赤らめて。
ああ、ここで一言『可愛いよ』と言える自分であったら良かったのに……。
「な、なに?」
「撮って。写真」
カメラを渡される。
「は、はい!」
ありかがなにか言いたそうだ。
「な、なに?」
ありかは真っ赤な顔で、
「あ、あの、吉高と、一緒に……」
あ、ああ。薫と一緒に、ね……。そうだ、そうだね……。少しは、がっかり、したけど……。
「わかった。ちょ、どいて、どいて! 薫、今度、こっちで写真お願いします!」
「あいよ! さとちゃん!」
薫をひっぱり出して、ありかとふたり、並ばせると、薫が
「なあに。さとちゃんも入りなよ! ちょっと、由貴ちゃん、写真撮って!」
と言う。
薫は、僕を無理やり呼び寄せると、僕とありかの肩に手をかける。
「え……あの、私……」
ありかが戸惑いの表情を見せた。僕もなんだか居たたまれない。でも薫には伝わらない。やつは上機嫌でピースサインを出してみせる。
「お役目係、三人組で~す! イエー!!」
カシャッ!!
よ、良かったのかな……。僕なんか入っちゃって。
チャイムが鳴った。
「よっしゃー!! 諸君!! スタンバイだ!!」
薫の号令で、急いで定位置に付く。
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