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好きなの?・1
『ハイカラさん茶屋』は、大成功だった。日曜日の午後4時に、売り切れ御免。みんなは大騒ぎで喜んでいたけど、僕は、なんのトラブルもなく、無事に終わったことに、ほっと胸をなでおろしていた。祭りの後、か。ちょっと切ない感覚が、僕の胸に心地よい。
廊下の窓から、ひとり外の人ごみを見下ろしていたとき、ありかに声をかけられる。
「長野くん、話があるんだけど。屋上まで来てくれる?」
屋上? 秘密の話なのだろうか。
もしかして……告白、とか? いや、ないよな、ないよな。それはないよな。
でも実際、僕に気軽に話しかけてくれる女の子は、ありかだけなのだ。
「い、いいけど」
わかっていても期待してしまう。男って馬鹿だな。
無言で屋上までついてゆく。めちゃめちゃ、緊張しますし。
果たして、屋上まで着くとガチャリと重たい扉を閉めて、扉にもたれ掛かったありかが、上目づかいに僕を見つめる。な、なにか……?
「あのね、言いにくいんだけど」
「な、なに?」
ドキドキドキドキ……。
「好きなの?」
え? 『好きなの』じゃなくて、『好きなの?』ですね……。
僕がありかのことを、密かに想っていることがバレてしまったのだろうか! そんなの、恥ずかしい! 『あんたに想われるだけで迷惑!』とか、言われてしまうのだろうか。あんまりだ!
と、一瞬の間に、いろいろ考えた。
「え、好き、だけど……でも!! もし、もし!! 迷惑、とかなら―――」
言ってしまった! 一番したくない形での、告白……。
「本気? 本気で吉高のこと、好きなの?!」
え、吉高? って、薫?!
「え、いや、待って! 薫のことは、別に。いや友達だけど―――」
「ほら、そうやって『薫』って下の名前で呼び合ってる!」
はあ?!
「吉高のやつ、私が『薫』って呼んでいい? って訊いたらダメだって!」
いや、いやいやいや。そんな……女の子が想像するほどには、男同士の恋愛ってないですし……。
「違うよ違うよ! 僕、男なんかより女の子のほうが好きだし。薫だって、貴子さんという立派な彼女が―――」
「彼女?! 吉高に、彼女?!」
ありかが眉を吊り上げる。
まずった。ありかは薫に惚れてるんだった。
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