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好きなの?・2
ありかはショックを受けているようだ。イライラと、足を踏み鳴らす。
「彼女って……どんなひと?! この学校のひと?! 先輩?!」
ありかはありかで強気だなあ。貴子さんとはちょっとタイプが違うけど……。貴子さんがシェパード犬で、ありかはヨークシャテリア、って感じ。
「いや、あの、大学生じゃないかな……。大人の女性っていうか、……なんか、なんて言うの? すっごく、余裕があるって言うか……」
「綺麗なひと? !」
「そりゃ、もう……髪が長くって、さら~って……」
ドン!!
ありかは、屋上の鉄の扉を思いっきり蹴ると―――
「い、ったあ……」
と言ってしゃがみこんだ。
「だ、いじょうぶ?」
僕がしゃがみこんで、肩に触れようとすると、
「触んないで!!」
と叫ぶ。
そんなあ……。それは君はショックだったかもしれないけど、僕は僕でショックだよ……。
僕はありかに掛けていい言葉が見つからなかった。
「……一人にして」
ありかが呟いた。
「え……?」
「いいから帰れええ!!」
ありかが怒鳴る。そ、そんなふうに言わなくても……。
「わかった。帰ります」
ありかを屋上に置き去りにして、僕はそそくさと扉を開けると、なかに入った。
「うわああああああああん!!」
すぐさま、ありかの叫ぶような泣き声が耳に聞こえる。
ありか……。ごめんな……。
ごめん。僕が薫じゃなくて、本当にごめん。傷つけてごめん。うまいなぐさめの言葉をもたなくてごめん。僕ほど役たたずでろくでもない人間もいないだろう。
僕は……やっぱり君のことが好きだ。計算をまるで知らない、君のことが好きだ。ありかの投げる球はいつも直球ストレート。とっても素直で無邪気な君。悲しいことがあったら泣くといい。怒るときには思いっきり怒ればいい。その代わり、君の心が晴れになったらとびっきりの笑顔を見せてくれ……。
本当に、ごめんとしか言いようがないな……。
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