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そう、そんな矢先にバスケットボールで吉高逃走……という一件があって。
吉高が僕の思いを、逆恨みを、なにも知らずに親しげに名前で呼んでくれたことで。ああ、吉高薫って男は本当にいいやつなんだなあ、と思ってしまった。
勝手に羨み勝手に妬んで申し訳ない。でも……天が吉高に、美貌も人気もありかの心までも与えたうえに、誰からも恨まれない綺麗な心までもお与えになったことすら不公平に思えた。僕はますます恨めしく思うだけであった。
違うんだ。たぶん。吉高の心が綺麗だから、陽の光の差すように明るくて温かく周りの人々に降り注ぐから、誰からも好かれ国立ありかも吉高に惹かれ……すべてはそういうことだ。
吉高は、誰かのことを恨んだり憎んだりしたことがないのだろう。富めるものはますます富み、貧しきものは……。そういうことなのだろう。
自分のもっている個性で満足して奢らない自信をもてるか、いつもいつも他人のことを羨んで生きるか。
吉高薫と僕の違いは、たぶんそこなのだ。
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