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雄ギツネのイプはその柔らかい岩に身を埋めて、吹きすさぶ豪雪の寒さに耐え凌ごうとした。
「う〜〜〜〜〜〜ん、だぁれだぁ〜〜〜〜〜?!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
「な、なんだぁ?!」
突然、身体を横たえていた柔らかい岩が轟音を立てて動き出して、雄ギツネのイプはビックリして飛び起きた。
「なんだありゃ?!でっかい岩かと思ったら・・・」
雄ギツネがずーっと寄りかかっていたのは、巨大なドラゴンだったのだ。
「キツネさん、キツネさん、寒いよ・・・何とかして・・・化けられるんでしょ?妖術で・・・」
その巨大なドラゴンはブルブル震えて、緊張して硬直する雄ギツネに顔を近付けてきた。
「で・・・できませんよっ!!キツネだけど、そんなもの持ってませんから・・・!!」
「ざ・・・残念だ・・・ぼ、僕、迷っちゃったんだ・・・
気が付いたら、この激しい積雪の世界だったからに・・・!!
寒いよ・・・寒いよ・・・
凍え死にそうだよ・・・!!」
巨大なドラゴンは、蚊が鳴く声で雄ギツネの方へ寄り添った。
「迷っちゃったって・・・何処から?!」
ドラゴンは、雄ギツネに事の経緯を話した。
「僕は、ここではない異世界からやってきたんだ・・・!!
僕が住んでるダンジョンで寝ていたら、ドラゴン退治の勇者パーティーがやって来て・・・
突然、魔道士に別時空に飛ばされる術式をかけられて・・・
気づいたら、この雪中の世界だよ?!
笑えるでしょ・・・?!
可怪しいでしょ・・・?!」
雄ギツネにはちんぷんかんぷんだった。
試しに、雪晒しのドラゴンに向って納得した態度をとってみた。
「酷い事になったね・・・こりゃ災難だね・・・ドラゴンさん。」
すると、ドラゴンはいきなり立ち上がって、身体中の積もった雪を振り落としてこう言った。
「キツネさん、僕に乗りなよ。これも縁だね。」
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