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ラジオからニュースが流れた。
『次のトピックスです。脳科学の権威。黄静賢氏が自宅の倒れているのが見つかり病院にて死亡が確認されました。死因は持病の』
片手でチャンネルを変える。
「人が死ぬニュースなんて聞き飽きてんだよ」
そう思いら適当にチャンネルを変えると。
今、流行りのDiVAの歌声が聴こえてきた。
让你的灵魂颤抖吧
如果我们不挺身而出,一切都将化为乌有
燃烧的恐惧
歌詞は勇ましいのに、声はなんだか物悲しい女性の声に聞こえる。
(暗いニュースより歌声の方がいい)
落ち着けるBGMをセットして一人、機械の山に埋もれるようなモニターの前でキーを叩いて、仕事の依頼がないかチェックする。
「出来たら義務教育の生徒や親からwebテストの盗みとか、簡単で稼ぎになる依頼は来てないかねぇ」
そうは言ってもすでに春季の大規模職業学力判断は終わっていて、俺のかき入れどきも終了していた。
後は細々と企業からのデバッグやセキュリティ対策。実入が良いものとしては警察関係者からの個人的な依頼が無いことはないが。
「企業関係はリテイクが煩いし、警察関係は長時間拘束されるからなぁ」
しがないネットの掃除家とは自覚しているし、昔みたいに選り好みが出来る立場じゃ無いとは分かっていても楽な労働を求めてしまう。
ふむと思い。十年前に買ったチェアに背を預けると、あと一カ月で壊れそうな軋んだ音を奏でた。
「はぁ。今日はもうやる気がしない。メシ食ってもう寝よう」
確か冷蔵庫に買い溜めした味がイマイチな大豆肉団子と白湯スープがあった。
適当に胃に流し込もうかと考えていたところ、モニターに新らしいメッセージ受信のアイコンが現れた。
なんだろうと開くと。
「この赤い文字は冥婚契約……!」
驚きばっとその場に立ち上がるとチェアは後ろに倒れて、鈍い断末魔のような音を上げたのだった。
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