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让你的灵魂颤抖吧
如果我们不面对它们,它们就会消失。
燃烧的怒火
ラジオから聞こえてくるDiVAの歌声のボリュームを下げて、立ち上がった状態のままで『冥婚契約』の文字をじっと見つめた。
冥婚契約とは一度でも中身を開いてしまうと強制的に契約が成立してしまう爆弾メール。
内容は流石に『この世の皇帝にしろ』とか『月を落とせ』とか無茶な事はない。
こちらが依頼をクリア出来るギリギリのものに設定されている。そしてその依頼報酬は一生遊んで暮らせる莫大な金額。
「これが来るってことは俺の過去もきっと把握済か。イヤらしい」
ふっと、ため息をついてモニタの文字を緩くパシンと弾く。そして直ぐにキーを打つ。
そもそもこれが本物の冥婚契約か確認する為に送り先のアドレスを確認する。
間違っても開かないように慎重に指先を動かしtracertを確認する。
パケットから経由するルーター。ドメイン名やIPアドレスを確認するが怪しいところはない。
「このアドレスは麒麟サイテック社で間違いないな。本物か」
世界の電子企業を牛耳る麒麟サイテック社が富裕層に向けて販売した商品が冥婚契約。
冥婚契約を作ること自体が非常に金がかかる。それは軽く一般市民の一年間分の給与に値する金額。作るだけでも数々の審査が必要。
「遊びや悪戯で出来る金額じゃない」
麒麟サイテック社の豊富な資金力を活かして、契約を完遂するまで見張ると言うもの。契約の内容に違反や不履行があれば依頼者の代わりに罰を与える。
その罰は死さえも含まれると言う。
「その偽物を作るなんて麒麟の逆鱗に触れるようなもんだ」
ふぅっとため息を吐いて考える。
この冥婚契約は所詮、開封せずにゴミ箱に突っ込めばスパムメールと何ら変わりない。
無視をしてこのまま冷凍庫食品を食って、再放送のドラマを見て寝てしまっても誰にも文句なんか言われない。
しかし、だ。
これがどんな内容か気になる。
誰が俺を指名したか知りたい。
それ以上に。
「目の前に巨万の富があるって分かってて引き返せない。俺は新しい椅子も欲しいんだよ」
ふっと笑って勢いのまま冥婚契約を開封したのだった。
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