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DiVAはそれこそ歌うように俺に語りかけた。
『お祖父様はこの月故を事故で失った。月故の肉体は破損し、どうしようも無かった。でも脳は生きていた。そしてお祖父様は「活かす」事だけを優先した』
──脳死か。
『お祖父様は損傷激しい手足などは捨て。活かす事に特化した。しかし、それでは』
「生きているとは定義しにくいな」
『そうよ。だから、体を補完出来ない代わりに頭を補完して月故の脳とコミュニュケーションを取ろうとした。脳は電気的信号を発する無数の神経細胞の塊。脳は形作られたネットワーク。微弱な脳波を拾いそれを増幅させてやれば、お祖父様はコミュニュケーションを取れるって思ったみたいね』
バカバカしいとは切り捨てれない。
普通そんな事は夢物語。
しかし黄静賢はそれを実現してしまう才能があったのだろう。
ふぅっと、ため息をついて。
「そうか。その補完がDiVA。君だね?」
『その通り! 私は生体反応がある脳を補完する事でスパコン以上の演算処理を手に入れたAI以上の存在よ』
スパコンは人が到達出来ない域の高速演算処理能力を有している。
それでもプログラムを作成して入力しないと動かない。しかし人の脳は自らが学習できる。自己組織化。人の脳は優秀なのだ。しかし、だらかと言って人はその全てを使いこなせていない。
『私達AIはどうやっても人の脳に勝てない。スパコンを稼働させて1秒間で活動する人間の脳の活動を再現すると、最新のスパコンですら三十分を要する。人間の脳のネットワーク1%に匹敵するのがやっと。でも。そんな脳にダイレクトにAIを繋げたらAIが脳の微弱な電波をキャッチしてアクセス出来る。お祖父様は私にその機能を与えてくれた』
「!」
『人の脳が生きたスパコンになる。優先順位は私よ。月故は私の部品ね』
あははと、一段と高く笑うDiVA。
俺は悲惨な戦場を見てきた。しかし恐ろしいとは思はなかった。その全ては人が引き起こした結果なのだから。
しかし、これは最早人の手に余る。
黄静賢は孫可愛さ故に踏み込んではいけない魔境に入った。
きっともう一度触れ合いたかったのかだろう。脳さえ生きていればコミュニュケーションが可能だと考えたのだろう。
しかし、DiVAは脳をアクセスする事に成功して本来AIが取得出来ない自己組織化。考えて、学習して、月故を取り込み。進化する生き物になってしまった。
そう思った瞬間。
目の前に居るDiVAの存在に体がふるえた。
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