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『でね、月故の脳にアクセスすると色んな箇所が破壊されていて残っていた記憶がめちゃくちゃで。音声として再現出来たのはこれだけだったわ』
パチンとDiVAが指を弾くと音声が流れた。
それは人の暖かみある音声。
『Twinkle twinkle little star,
How I wonder what you are.』
『おぉ、月故はなんてお歌が上手いんだ。おじいちゃんは感動して震えてしまったぞ』
『本当に? 私、おっきくなったら歌手になりたいの!』
『月故なら出来る。沢山の人を感動させて、魂まで震えさせる事が出来る』
『わぁい。私、頑張るねっ』
そこで音声がプツリと切れた。
そして機械的なDiVAの声が響く。
『だからね。お祖父様に壊されないように私は歌を歌うの。沢山の人を震えさせるのが月故の望み。だからそれを叶えるの。その為には新しい脳がもっと必要』
そしてDiVAは。
『これはもう古くなったから要らない。早くバージョンアップしたいの』と白柱を指差した。
口の中はカラカラ。
それでも「どうやって震えさせる?」と尋ねた。
『私の端末を各地に設置。歌声に乗せて指向性を持ったマイクロ波を照射。極水分子のマイクロ波のエネルギーを吸収して回転・振動させる。これで一気に広範囲の人間を震えさせる事が出来る』
それは所謂、電子レンジの理屈。
そんな事をすると広範囲の人間の水分が蒸発して燃え上がってしまう!
『お祖父様は一人泣いていたけど、軍の人達は沢山喜んでくれたもの。間違いないわ!』
また笑うDiVA。
会えば分かると言った意味が分かった。
もう迷うことは何一つない。
契約を速やかに遂行するのみ。
「そうか。お前はDiVAなんかじゃない。ましてや月故なんかじゃない。お前はただの猿の手だ」
『え』
俺は素早く懐から拳銃を取り出して石柱に。
いや、月故の遺体に弾丸を解き放った。
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