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第1王子と王宮魔道士
コーラルレイン王国の王都にあるアフロディーテ城。
それは、王族が暮らしている場所である。
「ここは・・?」
目を覚ましたサキ王子が自分のいる場所を確かめると、私室のベッドの上であった。
「サキ殿下・・!」
長い赤い髪を高い位置でポニーテールにしている女性がサキ王子にかけよる。
「フランシス・・!」
王宮魔道士フランシス・アリスベールは現在は第1王子サキの側近でもある。
燃えるような赤い瞳をしており、ポニーテールの結び目のリボンの色も赤である。
「私は・・。たしか、泉の間で・・?」
「はい・・。私が泉の間に向かうとサキ殿下は魔法で眠っておられ、護衛の騎士達も同じように眠っていました・・。お目覚めになられて本当によかったです・・」
サキ王子は泉の間での出来事を思い出す。
「とても強い魔力の魔法使いだったよ・・。おそらく、コーラルレイン王国で1番強いだろうね・・」
「サキ殿下を眠らせた魔法使いです。相当な実力の持ち主であると想像がつきます・・。私のカモフラージュの魔法も見破られたでしょうね・・」
フランシスは上位の王宮魔道士なのだ。
フランシスは先端が三日月の形をした杖を持っている。
コーラルレイン王国では王族に関わる人間は何かしら三日月をモチーフにした物を身につける。
マントをつけない一般の騎士は剣に三日月のマークがついており、騎士隊長はマントに三日月のマークがついている。
王宮魔道士は魔道服に三日月のブローチをつけているが、フランシスはブローチではなく三日月の杖を持っている。
この三日月の杖はフランシス専用の杖であり、彼女が「特別な存在」であることを意味する。
それは役職が王子の側近という意味ではなく、サキ王子個人にとって特別な存在であるという意味である。
王宮魔道士が王族の側近になったとしても、身につける物は他の魔道士達と変わらず三日月のブローチであり、杖も三日月の形ではない自分の杖である。
フランシスの三日月の杖はサキ王子の側近になった際に彼女の為だけに作られた唯一無二の杖なのだ。
「フランシス・・。私は当代のエターナルの持ち主に会ったよ・・」
「・・オブリージュ家の末裔の青い髪の女性でしたね。先ほど幼なじみの男性と行方不明になったとの知らせが届きました。勤め先の人間が彼女の自宅を訪れたところ、コーラルレイン王国を出ていくと記された手紙を発見し、アリアの街で騒ぎになっているようです・・」
ミーティアの手紙を見つけたのはパン屋の女主人であった。
試作段階のパンをミーティアに試食してもらおうと届けに行った際に、ドアに鍵がかかっていないことを心配した女主人が家の中に入り、テーブルの上に置かれた手紙を発見したのだ。
「ミーティア・オブリージュとルーシェ・シュピッツを追うつもりはないよ・・。私は希望にすがりロア神殿にミーティア・オブリージュを呼んだが、仮にエターナルをミーティア・オブリージュから奪えたとしても、フランシスの寿命が変わらないことはわかっていた・・。それがわかっていても、私はあきらめることはできないんだ・・」
サキ王子は心配そうに自分に寄り添うフランシスの手に自分の手を重ねる。
「私の妻となる女性の名は、フランシス・アリスベールだと決めているんだ・・」
「サキ殿下・・!」
フランシスの赤い瞳が潤んだ。
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