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「おはようございます、サキ殿下。本日のロア神殿での行事には私も同行致します」
「フランシスは王宮魔道士としてのロア神殿への同行は初めてだったね」
「はい・・。緊張しています・・」
フランシスと話していると、城内のいさかいで傷ついているサキ王子の心は穏やかになっていった。
弟のイェルカ王子と話している時とは違う「楽しさ」があったのだが、サキ王子には理由がよくわからなかった。
サキ王子とフランシスは主君と臣下という関係から仲の良い友人に変わっていった。
サキ王子は17才の時にフランシスへの気持ちが恋心であることに気づいた。
だが、その気持ちは胸に秘めていた。
フランシスは王宮魔道士で自分は第1王子なのだ。
好きだから結ばれるという事が簡単ではない立場だということを理解していたため、サキ王子はいつか来る初恋が消えてしまう未来が嫌だった。
それは18才の出来事だった。
「サキ殿下・・。私は19才になったら王宮魔道士を辞めます・・」
突然のフランシスの言葉にサキ王子は動揺した。
「どうしてだい、フランシス・・?魔法の才能も認められ、最年少で上位の王宮魔道士に昇格したじゃないか?」
「単刀直入に申し上げますと、私は長く生きられないのです・・。ですから、19才で辞めようと王宮魔道士になった時から考えていました・・」
「長く生きられない・・?!」
王宮魔道士を辞めるだけではなく、長く生きられないというフランシスの衝撃の事実も知りサキ王子は頭が追いつかなかった。
「サキ殿下にはすべてをお話します・・。サキ殿下はエターナルをご存知ですか?」
「知ってはいるよ・・。関わった者に永遠の愛と悲劇をもたらすという黒いペンダント、エターナル。コーラルレイン王国の建国神話にも登場するこの国の伝説の1つだったね・・」
王族であるサキ王子はアフロディーテ城内の書庫で建国神話を読んだ際にエターナルのことを知った。
王族たるもの国に関わる事はなんでも学ばなければならない。
「私の寿命にはエターナルが関わっているのです・・」
愛するフランシスは長く生きられない。
サキ王子にとってこれほど絶望することはなかった。
「フランシス・・。私は・・、私はね・・」
サキ王子は真剣な顔でフランシスを見つめた。
「いつか私の妃となる人は・・。フランシスがいいと思っていたんだ・・。その夢は・・、叶わないのだろうか・・?」
息が詰まるようなアフロディーテ城での暮らしに光をさしてくれたのはフランシスの存在だった。
サキ王子は悲しい事実を聞いて、秘めていたフランシスへの思いを告げたのだった。
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