名前のない想い

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「待たせてすまない・・。話があると言っていたな?」 「えっと・・、うん・・」 お風呂から上がったばかりのルーシェを初めて見たミーティアは動揺を隠せなかった。 いつも隣で暮らしていてもさすがにお風呂上がりのルーシェは見たことがないし、何よりルーシェの髪が少しだけ濡れているのだ。 おそらく、ミーティアのために急いで出てきてくれたからであろう。 ルーシェはベッドに座っているミーティアの隣に腰かける。 「熱でもあるのか?顔が赤い・・」 ルーシェは左手をベッドにつき右手を優しくミーティアの肩に置くと、ミーティアの額に自らの額をあてる。 「ルーシェ?!」 熱をはかるという理由ではあるが、目の前にルーシェの顔があるという光景にミーティアは緊張した。 あまりにも距離が近いため唇がぶつかってしまう可能性があるので、ミーティアは恥ずかしくても動くことができない。 美しいアメジスト色の瞳がミーティアをまっすぐ見つめる。 「熱はなさそうだな」 ルーシェの顔が離れる。 「ちょっと・・、お茶を飲んでくるね・・」 恥ずかしさを隠すためにミーティアはお茶を飲んで落ち着くことにした。 「この黒いペンダントの・・、エターナルのことを話したかったの・・」 ミーティアは首からさげているエターナルをにぎった。 「エターナルというのか・・。だが、王子が狙った理由がよくわからない・・」 「サキ王子はエターナルの事を人から聞いて知っていて、その人のためにエターナルが必要と言っていたの・・。エターナルにはとても強い魔力があって、関わった者に永遠の愛と悲劇をもたらすとも言っていたわ・・」 「理由があったとしてもミーティアに怖い思いをさせたことは許せない。俺だってどれほど心配したことか・・。あんな不安な気持ちには2度となりたくない・・!」 ルーシェが助けてくれなかったら自分はどうなっていたのかと考えると、ミーティアは怖くなった。 「ルーシェが助けてくれて、心配してくれて嬉しかったよ・・。本当にありがとう・・。でもね・・。だからこそ、聞きたいの・・」 ミーティアはルーシェの瞳を見つめた。 「関わった者に悲劇をもたらす・・。それは、ルーシェにもよくない事がおきるかもしれないってことだよね・・。だから、私と一緒にいると悪いことがあるかもしれないの・・。ルーシェは私の大切な人だから・・」 「そんなことはない・・!」 ルーシェはミーティアの手を優しくにぎった。 「俺にとって1番の悲劇はミーティアの隣にいられないことだ・・!だから・・、これからもミーティアの隣にいたい・・。ダメか・・?」 教会で出会った頃はルーシェのことを「友達」だと思っていたが、時が経つにつれ「大切な友達」になった。 しかし、今はなにか違う気がした。 ルーシェは「大切な人」だ。 でも、それは友達というより、もっと特別な気持ちだったのだ。 その気持ちを表す言葉はうまく出てこない。 ミーティアが今はっきりとわかるのは、幸せという気持ちで心がいっぱいだということだった。 「ルーシェ・・!」 ミーティアはルーシェを強く抱きしめた。 自分でもよくわからないが、そうしたいと思ったのだ。 「ミーティア・・?!」 突然ミーティアに抱きしめられたルーシェは頬を赤く染めた。 「お願い・・。これからも私の隣にいて・・」 サファイアの瞳からは涙があふれていた。 「・・俺の願いを叶えてくれてありがとう」 ルーシェはミーティアの髪を優しくなでた。
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