名前のない想い

5/5
前へ
/50ページ
次へ
それから1週間後。 コーラルレイン王国の王都にそびえるアフロディーテ城にはサキ王子の姿があった。 サキ王子は私室のソファーである書物を読んでいた。 それはフランシスの祖先であるセーラ・アリスベールが一族のために残した手記であった。 私室にはその他にも、読み終えた建国神話やエターナルに関する記述のある本などが大量に置かれていた。 この手記にはエターナルに関する重大な秘密が記されており、サキ王子はエターナルによって寿命が短いフランシスを救う方法を探していたのだ。 「フランシス、手記を返すよ」 手記を読み終えたサキ王子は険しい表情をしていた。 「サキ殿下・・、どうかなさったのですか?」 サキ王子の隣に座っていたフランシスが問う。 「1つだけ・・、方法が浮かんだよ」 サキ王子の表情は暗いままだ。 「それは、どのような方法なのですか・・?」 「少し待ってくれるかい?」 そう言って、サキ王子はソファーから立ち上がり私室のドアに向かう。 ドアを開け近くに誰もいないことを確認すると、部屋の周囲に結界をはる。 「結界を・・!サキ殿下、それほど重大なお話なのですか?!」 結界をはったサキ王子がフランシスの隣に座る。 「ミーティア・オブリージュからエターナルを奪っても、フランシスの寿命は変わらない・・」 「ええ、残念ながら・・」 フランシスは瞳を閉じる。 「私は、ある賭けに出ようと思うんだ・・。うまくいくかはわからないが、何もしないままではフランシスを救うことはできないからね・・」 結界をはるほどの重要な話にフランシスの緊張は強くなった。 「ナイトメアと言えばわかるかい・・?」 「・・!」 フランシスにはサキ王子が考えていることがわかった。 「・・サキ殿下。その地獄に私もお供させていただけませんか・・?」 「フランシス・・」 サキ王子はフランシスを見つめた。 「サキ殿下の罪は私の罪・・。地獄に落ちる時も、共に笑いながら幸せな日々を過ごす時も、私達は一緒です・・!」 フランシスの赤い瞳は真剣だった。 「我が妃よ、共に地獄に落ちようか・・」 未来をしめすかのように、快晴だったコーラルレイン王国はたちまち激しい雷雨へと変わっていったのだった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加