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太陽が空にのぼると小鳥達がチュンチュンと歌い、人々は新しい1日を始める。
ここはコーラルレイン王国。
争いのない平和な国である。
ヨーロッパのような洋風の街並みで国民の中には魔法を使える人、すなわち魔法使いが多く存在する。
王都の近くにある街「アリア」は今日も朝からにぎやかである。
朝日が差し込むアリアの街の小さな一軒家から、1人の女性が出てくる。
彼女の名はミーティア・オブリージュ。
コーラルレイン王国のアリアの街で暮らしている。
年齢は19才だ。
長くサラサラした美しい青い髪にサファイアのようなブルーの瞳をしており、胸元のリボンや所々にあしらわれたレースが特徴的な淡いブルーのワンピースを着ている。
ミーティアは自宅の隣にある家に向かうとドアを優しくコンコンとノックした。
数秒後、ガチャっと音がしてドアが開く。
そこには青年が立っていた。
「ルーシェ、おはよう!」
ミーティアがキラキラと輝くような笑顔で朝の挨拶をする。
「おはよう、ミーティア」
少し照れたような表情をして、ルーシェと呼ばれた青年がミーティアの挨拶に答える。
ルーシェ・シュピッツはミーティアの幼なじみの青年で、年齢はミーティアと同じ19才である。
銀色のショートヘアにアメジストのような紫色の瞳をしている端正な顔立ちの青年だ。
白いシャツの上に黒いベストを着ており首元には貴族のような巻き方をした白いスカーフ、黒いズボンに黒いブーツを履いていて、腰元には短剣を携えており剣士のような見た目である。
ルーシェは小柄で華奢な青年だが、背はミーティアよりもルーシェの方が高い。
2人の家は隣同士であるため、ミーティアの1日はルーシェへの挨拶から始まる。
ミーティアは魔法が使えないため、今はアリアの街のパン屋で働いている。
魔法使いであるルーシェは薬草を使った薬の調合や、コーラルレイン王国の伝統的な文化である子供が生まれた時のおまじないのテディベア作り、神殿や王都にあるアフロディーテ城での行事の補助など魔法を使った仕事をしている。
ミーティアとルーシェにはある「約束」がある。
その約束は、毎晩ミーティアの家でと決まっている。
「ルーシェ、着替えたよ!」
首元が広くあいているワンピースに着替えたミーティアが部屋に戻ってくる。
「いつもすまない、ミーティア」
椅子に座ってミーティアを待っていたルーシェが申し訳なさそうに言う。
「気にしないで大丈夫よ、ルーシェ!さぁ、座って座って!」
ミーティアがベッドに腰掛け、ポンポンとベッドを軽い力でたたいて自分の隣へルーシェを呼ぶ。
「少しだけ待ってくれ」
ミーティアの隣に座ったルーシェは魔法を使う準備をする。
「あらぶる力よ、激しき嵐のあとのやわらかな風のように静まれ・・」
ルーシェが座ったままミーティアの手を優しくにぎりながら呪文をとなえる。
一瞬、青い光が輝く。
「これで痛くない」
「ありがとう、ルーシェ」
ルーシェはベッドに腰掛けているミーティアの肩に右手をおいて抱き寄せると、ミーティアの首に顔を近づけて優しく噛んだ。
そして、左手でミーティアの手をにぎりながら血を飲む。
ルーシェは「ヴァンパイア」なのだ。
ルーシェの魔法のおかげでミーティアに痛みはない。
今、ミーティアの首には逆三角形の黒いペンダントが飾られている。
普段はワンピースの下に隠しているのだが、今は家の中であるためペンダントを隠してはいない。
このペンダントはミーティアのお守りでもある。
物心がつく頃に、ミーティアが教会に保護された時から身につけていたとシスターが言っていたのだ。
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