初恋

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ミーティアには両親の記憶がない。 あまりにも幼かったため覚えていないのだ。 小さい時の事でミーティアが覚えているのは、教会で暮らしていたということだ。 ミーティアは両親が病気で亡くなった事により教会で暮らすようになった。 シスターからは父親が若くして他界したあとに母親も亡くなったと聞いた。 教会での暮らしに慣れた頃、ミーティアに運命の出会いが訪れる。 「はじめまして!私、ミーティア!あなたのお名前はなあに?」 ミーティアは、新しく教会にやって来た銀色の髪の男の子に声をかけた。 「おれは、ルーシェ・・」 ルーシェはいつも1人で過ごしていた。 自分から話しかけることはしないが、誰かに話しかけられた時は答えていた。 「ルーシェね!よろしくね!」 「うん・・、よろしく・・」 ルーシェは青い髪の少女、ミーティアに話しかけられて嬉しかった。 だが、それと同時に困ってしまった。 ルーシェが仲良くしたいと思っても、仲良くできない「理由」があるからだ。 「ルーシェの目は、アメジストみたいできれいだね!」 ニコニコしながらミーティアはルーシェに声をかける。 「ミーティアは、髪も目もサファイアみたいだと思う・・」 いつも1人で過ごしていたルーシェだったが、今はミーティアと話す事が多くなった。 ルーシェも本当は教会で友達を作りたかったが、とある「理由」で1人で過ごす事にしていたのだ。 もっと仲良くなってからでは遅いと思ったルーシェは、ミーティアに真実を告げる決意をする。 「ルーシェ、お話ってなあに?」 ルーシェは教会にある庭園にミーティアを呼んだ。 「ミーティア、おれと話しちゃダメだ・・!」 「どうして?ルーシェとお友達になっちゃいけないの?」 ルーシェはミーティアに嫌われる事が怖いと思いながらも、自分の事をミーティアに伝える。 「おれはヴァンパイアなんだ・・!人間じゃない・・。だから・・、だから・・!」 ルーシェは涙を流しながら告げた。 仲良くしてくれた友達は、ルーシェがヴァンパイアだと知るとみんな離れていった。 ルーシェも両親が亡くなり教会に保護されたが、これまでの悲しい出来事があり友達を作らないと決めていた。 でも、本当は友達がほしかった。 そんな時にミーティアが話しかけてくれた。 ルーシェは嬉しかったが、真実を告げれば彼女も離れていってしまうだろうと思った。 だから、どうせ嫌われるのなら浅い傷ですむ「今」がいいと思ったのだ。 「泣かないで、ルーシェ・・」 ミーティアはルーシェを抱きしめた。 「ミーティア・・?」 自分はヴァンパイアだと告げたのに、ミーティアは泣いている自分を心配してくれる。 幼いルーシェにはこの状況が理解できなかった。 「おれはヴァンパイア・・、人間じゃないよ・・。怖くないの・・?」 目の前で青い髪が風に揺れている。 「私はルーシェとお友達になりたいの!ヴァンパイアと人間はお友達になっちゃダメなの・・?」 こんな言葉をずっと待っていた。 夢に見ていた。 「おれも・・、ミーティアと友達になりたい・・」 アメジスト色の瞳から流れる涙は「悲しみ」から「喜び」に変わっていた。
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