初恋

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ルーシェはミーティアに心を開いた。 ミーティアはルーシェにとって、自分がヴァンパイアである事を知っているのにも関わらず、初めて友達になってくれた大切な人だからだ。 ルーシェの心の氷は少しずつとけていき、ミーティア以外の人とも話すようになっていった。 そして、ミーティアとルーシェは教会の誰もが知る仲良しの友達になった。 コーラルレイン王国では教会で暮らせるのは15才までと決まっており、16才からは教会を出て暮らさなければならない。 15才になったミーティアとルーシェは、教会で暮らせる日々が終わりに近づいていた。 数年前からミーティアとルーシェは、教会を出てからも近くで暮らそうと話していた。 そんなある日、ルーシェは思い出の庭園にミーティアを呼んだ。 「ルーシェ!」 髪の色も瞳の色も輝くような笑顔も小さい時から変わらないが、記憶の中のあの日の幼い少女から美しく成長したミーティアを改めて見たルーシェは頬を赤らめる。 「美しいな・・」 無意識にミーティアに聞こえない小さな声でルーシェはつぶやいていた。 2人が幼い頃から変わらない教会の庭園だが、ミーティアとルーシェは15才になった。 景色が変わらなくても時は流れてしまうものである。 「実は・・、俺たちヴァンパイアは16才になったら、毎日人の血が必要になる・・」 ルーシェがミーティアを庭園に呼んだのはこの事を話すためだった。 「そうだったのね・・!」 出会った日から共に過ごしてきて、ルーシェはヴァンパイアというだけで人間と変わらぬ生活をしていたため、ミーティアは知らなかった。 「そして、血をもらう人は同じ人でなくてはいけない。異性という決まりがあるから、俺の場合は男だから女性から血をもらわなければならない・・」 ルーシェが少し悲しそうな顔をしながら言う。 ルーシェはミーティアに想いを告げようとしていた。 だが、告白がうまくいくとは限らない。 自分の気持ちを伝えてもミーティアの返答によってはルーシェの人生は変わってしまう。 もしも、ミーティアが自分と同じ気持ちでなかったら、ヴァンパイアであるルーシェはミーティアではない女性から血をもらって生きるしかないのだ。 「血をもらえる人は見つかったの・・?」 よくわからない不安がミーティアをおそう。 「まだだ・・」 ルーシェの答えを聞くとミーティアの不安はやわらいだ。 「俺は、血をもらうのは好きな人からがいいと思っている」 ミーティアのやわらいだ不安はつかの間だった。 「そう・・。じゃあ、私ではダメなのね・・」 ルーシェの目を見て話していたミーティアは、ルーシェから視線をそらす。 まだ血をもらう相手が見つかっていないのは安心したが、ルーシェがその相手を「好きな人」と決めているのならば自分ではダメだと思い、ミーティアは悲しくなってしまう。 先ほどからルーシェの話を聞いていて、不安になったり安心したり悲しくなったりする理由がミーティアにはわからなかった。 「それは・・、ミーティアから血をもらってもいいという事なのか・・?!」 ミーティアがルーシェに視線を戻すと、なぜかルーシェは驚いた表情をしていた。 「私がよくても、ルーシェは血をもらうのは好きな人がいいのでしょう・・?だったらダメじゃない・・」 再びミーティアが落ち込む。 「あれは・・、言葉の綾だ!ミーティアから血をもらえないかと聞こうとして、上手く言えなかっただけだ!だから、その・・」 ルーシェは大きく深呼吸をする。 「ミーティアがいいのなら、16才から血をもらってもいいだろうか・・?」 真剣な顔をしてルーシェが問う。 「うん、いいよ・・!私、勘違いしちゃったのね・・。なんだか恥ずかしい・・」 ミーティアはホッとした。 ルーシェもミーティアの言葉に安堵する。 初恋の人であるミーティアから血をもらえるという願いが叶ったのだ。 真面目なルーシェは、今それ以上のことを願うのは贅沢だと思った。 胸に秘めた想いはいつか伝えられればいいのだから・・。 「ミーティア、ありがとう。この庭園で俺と友達になってくれて・・。そして、俺に血をくれることも・・」 この庭園でのミーティアとルーシェの思い出がまた1つ増えた。 「私も、あの時ルーシェと友達になれてよかった!私の血が美味しいのかはわからないから、不味かったらごめんね・・!教会を出て暮らすのは少し不安だけど、これからもルーシェと一緒だと思うと、私すごく嬉しいの・・!」 ミーティアが幸せそうに微笑む。 あの日のように、ルーシェの目の前ではミーティアの青い髪が風に揺れている。 ただ、あの日と違うのはルーシェのミーティアへの想いだった。 「何があっても、俺がミーティアを守る・・!」 「ルーシェ・・」 そう言って、ルーシェはミーティアを優しく抱きしめた。
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