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ガタガタと震えているのは寒いからだけではない。
怖い怖い怖い。
こんなことになったのはあいつのせいだ。自分は何も悪くないのに理不尽すぎる。震える手でアプリを立ち上げようとする。しかし、手がかじかんでうまくいかない。
「早く、早く!」
ようやく開き、すぐに通話となった。
「萌? 今どこに――」
「早く歌って!」
「え?」
「早く歌ってよお! アンタのせいなんだからね!?」
「なに」
こうかんしましょう こうかんしましょう
「ひいっ!?」
あのこはおはぎ
「いやああ!?」
どう、どう?
こうかんしましょう こうかんしましょう
あのこかいな
あのこかしら
スマホの向こうから聞こえるのは、いつも強気な幼馴染。やだやだと泣きながら、声が遠くなる。
「お前のせいだよお! ふざけんな紀江ええ!」
そして。断末魔の悲鳴が聞こえた。
「も、え?」
その後いくら呼びかけても、返事をしなかった。そのかわり、か細い声が聞こえた。
こうかんしましょう、こうかんしましょう
あのこかしら
この歌は子供の頃歌っていたやつだ。ずいずいずっころばしなどと同じ、手遊びで歌うもの。
その日、紀江は三人目の友人をなくした。
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