セフレの先っぽ

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すると、何か固いものが指先に当たって、そっとそれを掴み上げる。 それを目の前にした私は、それが何かを知ってるくせに聞かずにはいられない。 「⋯⋯これ、は?」 「俺んちの合鍵」 「⋯⋯えっ?」 「こうでもしないと信じて貰えなさそうだったから⋯⋯。お前、まだ俺が女遊びしてるって思ってるだろ。だから急遽(きゅうきょ)作った」 話が読めなさ過ぎて首を傾げる私に、颯は言う。 「俺、お前しかいらないから。他の女とか、もういらないし。お前さえ居たらいいって本気で思ってる」 これは、嘘か誠か。 一体なんなのか。 「だから俺と、付き合って欲しい」 遠くから並木が風に揺らされ、さやぐ音が聞こえて来た。 次第にその音も近付いて来て、今度は颯の髪を揺らした。 「⋯⋯っ」 思考が⋯⋯めちゃくちゃだ。 だけど、これだけは分かる。
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