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「うっ⋯⋯嬉しい⋯⋯」
まるで夢みたいだ。
こんな事があっていいの?
「私も⋯⋯颯が⋯⋯好き、だから」
言えた。
私⋯⋯ずっと、本当はこう言いたかった。
「ちゃんと付き合いたい⋯⋯」
頬に涙が伝うと、颯は優しく拭って来る。
何度も手放そうとした、この温かな手で。
「うん」
言い終わると同時に、はー、と長いため息をついた颯は、おもむろに私を骨が軋みそうな程に強く抱き寄せた。
そして掠れるような声で言った。
「良かった⋯⋯。マジで、断られたらどうしようかと思った⋯⋯」
その言葉を受けて、颯も私と同じくあの関係に悩んでいたのかも知れないと思った。
「断るわけ、ないよ⋯⋯」
私はシトラスの香りのするコートに顔を埋めていると、今度は顎をグイッと持ち上げられる。
熱い眼差しが私を捉える。
「ずっと、離さないから」
テレビとかで聞いた事がありそうなその台詞は、颯に言われると凄い破壊力で、思わず嬉しくってしゃくり上げるほどに泣いてしまった。
そんな私を驚くほど優しい瞳で見つめてくる颯は、私の唇をそっと塞いだ。
颯の唇は、いつもよりとても熱くて、塩辛い味がした。
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