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すると、驚く声が背中越しに飛んで来た。
「え、なんで?まさか、好きな奴でも出来た?」
「ううん。そろそろ就活も始まるし、こんな風に遊んでばかり居られないかなーっ……て」
全然平気なんかじゃないのに、平気なふりを取り繕って話す私は、まるで大女優。
「就活と関係無くね?」
「こんな関係、なんか乱れてるじゃん。私がちゃんとしたいの」
「ちゃんと……って」
何か言いたげなのに、それ以上続かない言葉に、なぜか愕然としてしまう。
そらそうだ。こう言われて返せる言葉なんて無いだろう。
仮にも友達だし、共通の知人も多い。
だから、変に引き止めて変な終わり方なんてしたくないんだろう。
「今までありがと。颯もそろそろチャントしなよ」
私は「穂乃果っ」と言って立ち上がった颯から逃げるようにして、半年分の思い出が詰まった部屋を出た。
さっきまで毅然とした態度を取り繕っていたのに、ドアを閉めた瞬間にそれが崩れて行く感じがした。大女優終了のお知らせだ。
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