セフレの先っぽ

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それが本当なら、私は⋯⋯? 「へぇ⋯⋯。じゃあ、部屋に入れたら本命って事じゃない?」 「そーゆー事だと思うよ。だからそれに気付いた狙ってる人達がこぞって颯の家に行きたがってるみたいなんだけど、今のところ全滅らしいよ」 「へぇ」 ………… …… 冬は日が沈むのが早い。 まだ学校に人がいるっていうのに、もうこんなにも薄暗くなって来ている。 暖色に染まる空と大学の広い屋上。 そこで私は一人、買ったばかりの煙草の透明なフィルムを外した。 間もなく姿を消すであろう夕陽を見ながら久しぶりの煙草を咥える。 すると懐かしのメンソールの香りが鼻をついた。 「噂を本気にするなんて⋯⋯どうかしてる」 そう自分に言い聞かすように呟いてから、煙草に火を付けて久しぶりの味を堪能⋯⋯ 「ぷはぁ……。うまっ!……いのか?」 しようとしたけど、記憶にある美味しさとはかけ離れていて、なぜかとても不味い。 「あれ?こんなんだっけ?」 久々のニコチンは、不思議な事に全然美味しくない。 しかも少し目眩(めまい)がしてきたし。 たったの3ミリなのに。どうなってんの? 昨日寝れてないから? 何度か吸って、もう無理だと判断した私は半分以上残っている煙草を携帯灰皿に押し付けた。 「もったいな⋯⋯」
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