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「魔物の森の魔素の泉に関し、浄化は一時凌ぎにしかならないと思われます。魔族に関しては……もう手遅れです」
古龍を一撃で討伐し、魔素の泉を浄化される事ができる勇者が現れた。
浄化されたと思われたウェスタンの森の魔素の泉も、1ヶ月も経たないうちに魔素の大量放出を始めた。
ヴェイリー大神官の読みは当たっている。
「……魔素の泉の浄化は私にはできません。私は聖魔法は使えてもアルテマ神の使徒ではありませんので」
ヴェイリー大神官はアルテマ神の使徒でなかった。
アルテマ神からの御告げなしで現状を把握をしているヴェイリー大神官の有能さに圧巻する。
「大丈夫です。この時代の勇者と聖女がこの国を守ってくれます。今の私では足手まといにしかなりません。この教会でアルテマ神に祈る事しかできません」
アルテマ神の使徒に選ばれた勇者と聖女について、ヴェイリー大神官は何か情報を掴んでいるのかもしれない。
ヴェイリー大神官との対談後、サウスタンの森に独り立ち寄る。
サウスタンの森も魔物の森だがここだけは魔素の泉が穢れていない。
アルテマ神の使徒に選ばれた聖女がいるかもしれない。
「大陸全体の魔素の泉が穢れているから、全魔力を使って浄化しても、効果無いわ」
魔素の泉に聖女がいた。
ウェーブかかった淡い桃色がかった長い金髪をなびかせ、角度や周りの環境によって色が変わるタンザナイトのような大きな紫色の瞳をした少女が魔素の泉に祈りを捧げている。
雪のように透き通った白い肌に薄桃色のふっくらした小さな唇から、最上級浄化魔法の呪文が唱えられる。
サウスタンの森の魔素の泉が黄金色に光輝き、大陸中の泉を浄化していく。
浄化を終えた少女と目が合った。
手足首に腰が折れそうなほどに細い可憐な美しい少女に俺は心を囚われ惹きつけられた。
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