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一面の黄金世界。輝く砂が風に乗って優雅に舞っている。
先ほどまで日本上空を飛んでいたはずなのに全く知らない土地の上空を飛ぶ。
フィクションでしか見たことのない景色、アラジンの物語に迷い込んだ気分だ。
しかしこれはどこなの? それにちゃんと戻れるの?
「皆さん、ただいまサハラ砂漠上空を飛行しています。窓からは日本では味わえない広大な景色が広がっています、是非ご覧ください」
キャビンアテンダントの丁寧なアナウンスによって位置は確認できた。しかし日本からいつの間にか凄まじい距離を移動してしまっている。
恐る恐るサンタのようなおじさんを眺める。おじさんはスマホ取り出そうとしていたが、こちらに気づいた途端に吹き出して笑い声をあげた。
「心配しなさんな、さっきも言ったように安心安全快適な空の旅さ。景色を楽しまないと損するぞ」
そのままサンタおじさんは嬉々として写真を撮り始めた。のんきにもほどがある。
「でも、ここどう見ても日本じゃないですよ、一体何日かけたら戻れるんですか」
「ん? 定刻通りに福岡に着くよ」
流石にうそだ、一体何キロあると思っているんだ。
到底信じられないと思っていたのが伝わったのか、サンタおじさんは、ほう、と呟き口角を上げて笑顔になる。
「〈エアポケット〉に常識は通用しないんだよ」
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