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それからまた何年かが経ち、私は大人になった。
販売会社に就職した私は、仕事で再び陽だまり町へと訪れた。そして、あの駄菓子屋の近くを通りかかった。
「おじさん、今も元気にしてるかなぁ…」そう思いながら駄菓子屋の前まで来ると、一人の女の子が泣いていた。私は女の子に話しかけた。
「どうしたの?」
「おかあさんからもらった100えんなくしちゃったんのぉ!おかしかえないよぉ!!」
あの時の私とそっくりだ。泣きじゃくる女の子を見た私は、女の子に見えないように財布から100円玉を取り出した。
「じゃあ、お姉ちゃんが100円を呼び戻してあげる」
「え?どうやって?」
私は手の内に親指で100玉を抑えながら、女の子のポケットを軽く3回たたき、「100円よ、戻ってこい!」と唱えた。
「はい、戻って来たよ」と、ポケットから手を出し、女の子に100円玉を渡した。
「すごぉい!!」
「もうなくしちゃ駄目だよ」
「ありがとう!おねえちゃんってまほうつかいなの!?」
女の子がそう言うと、「そう、そのお姉ちゃんはまほうつかいだよ」と、お店の奥から懐かしい声がして振り向いた。
私たちは顔を見合わし、にこりと笑った。
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