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私は幼い頃、陽だまり町という町に住んでいた。小学1年生になると、母から初めてのお小遣い100円を貰った。私はとても嬉しくて、飛んだり跳ねたりと大はしゃぎしながら近くの駄菓子屋へと走った。途中転んだりもしたが、泣いたりはしなかった。自分で欲しい物が買えるという喜びの方が勝っていたから。
駄菓子屋にやって来ると、私は50円のチョコレート2個を握りしめてレジへと向かった。
「これください!!」
「はい!ありがとう!」
駄菓子屋のおじさんはとても気の優しい人だった。私はチョコレートを買おうと、ポケットから100円玉を出そうとした。
「…あれ?…ない!100円がない!!」
「お嬢ちゃん、どうしたんだい?」
「おかね…おとしちゃったぁ!!はじめてもらったおこづかいなのにぃ!!」
きっと転んだ時に落としてしまったんだろう。私はショックのあまりに、その場で泣き出した。すると、おじさんが私の傍へとやって来た。
「よし、それじゃおじさんが、お嬢ちゃんの100円を呼び戻してあげよう」
「え?」
おじさんはそう言い、私のポケットを軽く3回ほどたたきながら、「100円よ、戻ってこい!」と呪文のような言葉を唱えると、ポケットの中に手を入れた。
「さぁ、戻って来たよ」と、ポケットから手を出すと、おじさんの手の中に100円玉があった。
「あっ!100円だ!!」
「もうなくしちゃ駄目だよ」
「うん!ありがとう!!」
私はおじさんに心から感謝し、チョコレートを買って家へと帰った。
本当に素敵なおじさんだった。きっとレジのお金を私にくれたのだろうと、今なら分かる。でも、まだ純粋無垢だったあの頃の私は、おじさんの事を魔法使いだと心の底から思っていた。
それからは月一のお小遣いを貰う度に、私は駄菓子屋へと足を踏み入れていた。けれど小学3年生になった年に、父親の転勤で隣町へと引っ越し、もうその駄菓子屋には行かなくなってしまった。
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