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おうちさがし
ぼくは、「まいご」というらしい。ぼくはお家がないんだって。さっきまで一緒にあそんだこも、お母さんがご飯だよって。かえっちゃった。だから今日もひとりきり。
その日は酷い雨だった。路上を打ち続ける雨粒はとても痛々しくて、苦しそうで、頼りないちいさな背中は1歩1歩、歩を進める。
真っ直ぐな道、されどぬかるんだ道。周囲の家の灯りとは対照的に冷たい外気。帰る家を探して、僕がまだ純粋無垢であった頃。
あしたは晴れるといいな、みちが歩きやすいから。さっきみたいに転んだりしないし、こんないたい思いはしないもんな。長い長い道は一体どこから始まった?もう覚えてない、もう分からない。歩かなきゃ、家に帰らなきゃ、後は何にもわからない。
暗くなると、すれ違うのはおとなたちだけ。良い人かもしれないけれど、話しかけるのは少し怖くて下をむいて歩く。おとなの目をみるのは何故かこわかった、辛かった。靴の中には砂利がはいって、雨が染み込んでおもたくなる。きのうの1歩よりおもたい1歩。そういえばこの前、知らないおじさんに話しかけられたけれど、ぼくは全然、話し方がわからない。そのおじさんの言葉でいえば「くちがきけない」のだと思う。
明るい街並みを、一家だんらんしてる家族たちをみて、いいなぁ。ぼくにもほしいなと思うのは内緒のはなし。
ちいさな背中は絶えず歩く。痛みも気にせず歩き続ける。ぎこちなくて純粋で、いつか帰る場所があると信じたその子は希望を見てた
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