バイブる、プロポーズ

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 宝石店に足を踏み入れた途端、特有の甘い香りに胸を焼かれた。  早くも宝石店に来たことを後悔していた。  しかしまあ、宝石店というのはどうして揃いも揃って甘いのだろう。  白を基調とした店内のつくり。ゴージャスな人種がつけていそうな海外ブランドのキツイ香水の香り。  いつも思う。  マシュマロか!  宝石店はマシュマロだ。食後のゲップまでねっとりさせる、あのイヤらしさに溢れている。デートの途中で寄ろうものなら、そのあとのメイクラブのパフォーマンスに影響が出るほどのイヤらしさだ。俺が普段からマシュマロを食べない理由はそこにある。あ、でも、スモアはおいしいと思う。バーベキューの時は必須だよね。塩気のきいたクラッカーの上に焼いたマシュマロを乗せ、チョコを乗せ食べる。あれなら何個でも食べられるな。その昔、ガールスカウトがあまりのおいしさに「ワンスモア」とねだったことから名前が付いたとか。  ん? 何の話だ?  ともかく、俺は胸焼けがひどくなる前に、さっさと用事を終わらせて店を出ようと決め、カウンターへと向かった。
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