ポケットの中に世界があふれてる

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 その高校生は、はきはきとその歌を解説した。彼がリーダーのようだ。僕も高校生になったら、あんな風に言えるように、なるのだろうか。両脇の女子二人は、彼の語りに合わせてこく、こくと前のめりに頷いている。彼らの眼差しはきらきらと輝き、何かを必死で呼び込もうとしていた。  呼び込もうとしているもの。それはもちろん「勝利」だ。「甲子園」というだけあって、この人たちは短歌のよしあしを競い合っているらしい。 「ちなみに、」  明確な解説のあと、高校生は満面の笑顔でこう締めくくった。 「この歌のために、僕髪切りました」  ざわざわ。さざなみのような、小さな笑いが起きる。  高校生もにかっと笑った。  確かに。彼の髪は美しく整形されたマッシュルームのように、まっすぐだった。  何だろ。  何だかじっと見てしまう。  マッシュルーム頭、だけど、まるでどこかの国のロックスターのようだ。僕はテレビの方を向いて、寝転がり直した。  もう一つ、別の高校が歌を出す。マッシュルームの彼の高校と、もう一つの高校、二校のうちどちらかが、決勝に進めるらしい。  結果は、マッシュルームの高校の勝ちだった。
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