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あ、すごい。
彼らと無関係な一視聴者にすぎない僕も、うれしくなる。
「西陽高校文芸部、決勝進出。メンバーの三人は、いずれも一年生です」
西陽高校は、となり町の高校だ。僕と同じ県の代表なんだと気づく。
一年生。マッシュルーム先輩、僕より一つ上なのか。
たった一つしか違わないんだ。なのに短歌とか作れるんだ。何か大人だな、やってることが全部大人。でも。
高校生と、中学生。テレビの中のマッシュルームと、テレビの前に寝転がった僕。
だけど僕たちは、同じ世界にいる。
同じ世界にいて、同じものを見ている。そして、つらい、しんどい、苦しいと感じることもきっと、同じ。
前髪をあえて直線状に切る大人の歪に寄り添うために
そうだ。
そうだよ。
僕もそう思ってた。
いやな気持ち。苦しまぎれの気持ち。
口に出すほどでもないと思っていた。
けれど。
マッシュルームがそれを明らかにして、笑いながら歌った時、僕は、とても体が軽くなった。そして、気持ちよくなったのだ。
まるでマッシュルームにこわばった肩を、抱き止められたように。
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