ポケットの中に世界があふれてる

5/19
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 短歌をもっと知りたいと思うようになったのは、それがきっかけだった。三十一音の短い歌。僕にも歌えるようになるのだろうか。  学ぶなら、何事もまずは教科書から。詩と短歌のページが確かあったはず。  あった。正岡子規の肖像。……に、巨大アフロの落書き。  全く、がっかりさせるぜ、過去の自分。どんだけヒマだったんだこの時。  失望を勇気に変えて、ページをめくる。  ストライプ模様のように並べられた短歌を、五、七、五、七、七……と数えながら読んでみる。すると、リズムが生まれる。リズムが生まれると、音が歌になる。  そっか、これは歌だ。短い歌だから、短歌と呼ぶんだ。なんて、当たり前のことに気がつく。  好きな歌を見つけた。五、七、五、七、七。たかたかたん。たんたかたかた、たかたかたん。  リズムに慣れると、また世界が違って見えてくる。不思議だ。全部七五調で言える気がしてくるのだ。    まじやばい電車一本乗り遅れ  そう言えばあの俳優さん推せたかも  誰にも言わないけど推せたかも  
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!