(二)

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 その警備員というのは工事現場付近に立つ非武装の交通誘導員たちではない。テロを警戒して配備された武装したMGKSという民間警備会社の警備員だった。  騒然としていた一団は、その警備員が姿を見せると、一気に静かになり、集まっていた労働者たちも何事もなかったように持ち場に戻っていった。  このときはそれで済んでいたが、この壁建設は前週の一件だけでなく、その政治的な意義のためにテロの目標となりたびたび事件が起きていた。このときの騒動は割と小さく、大したものでもなかった。むしろこの日の夕方には、民警が発砲し作業員が脚を負傷するという事態も起きる。  そういうコトが頻繁に起こるため、この壁の建設工事が始まるとほぼ同時に武装民警が配備されていたのだった。 (続く)
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