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やがて、刑事の右腕に留められた国産腕時計の軍用ブラックモデルの短針が九時を指しているのに気づいた。
「おっ、もうこんな時間か。そろそろ我々は帰らなくてはな」
悦子の視線に気づいた刑事が言った。
悦子にはその時計に見覚えがあった。すぐには思い出せなかったが、誰かが持っていたような気がした。そのためその腕時計をジッと見ていた。
「これが気になるか」
刑事の問いに悦子は「いや」とだけ答えたにもかかわらず、刑事は蕩々と語り始めた。
(続く)
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