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※このお話しは、Amazon版『偽花嫁と溺愛王』の元になった中編です。
「僕は偽者のオメガ花嫁です! どうぞ僕を処刑してください!」
フウル・ルクセンは王座の前でパッとひざまずいた。
国王の顔を見る勇気はなかった。
冷たい大理石の床に両手をついて、ギュッと目を閉じて、殺されるのを覚悟する。
頭の中は真っ白だった。心臓がドキドキと早鐘のように鳴っている。息をするのも苦しいほどだ。
「⋯⋯ぼ、僕は、陛下が待ち望んだ花嫁ではありません。僕は、国民に嫌われている王子です。陛下を騙してもうしわけありませんでした⋯⋯」
涙があふれた。その涙を指で拭おうとしたら、指先がブルブルと激しく震えた。
「僕は⋯⋯、僕は⋯⋯」
必死で言葉を続けようとしたとき、誰かがゆっくりと近づいてくる。
フウルはハッとして顔を上げた。
すると——。
背が高くてたくましい男性の姿が見えた。
とても若かった。十八歳のフウルよりきっと五、六歳年上だろう。
砂漠の砂のようなくすんだ金色の短髪をしている。
瞳はガラス細工のようにきらめく不思議な色で、吸い込まれそうなほど透き通っている。
人間離れした美貌の持ち主だった。もしも動かなかったら彫像と見間違えてしまったかもしれないほどだ⋯⋯。
男らしい眉の下の切れ長の目が、じっとフウルを見下ろしている。
広間に集まった貴族たちが、
「陛下」
と、いっせいに頭を下げた。
——この方がリオ・ナバ国王陛下?
フウルは慌てて頭を下げた。震える声で繰り返す。
「ど⋯⋯、どうぞ偽者の僕を⋯⋯、僕を、処刑してください!」
すると頭の上から、暖かさと優しさに満ちた低い声が、ほんの少しだけ笑いを含んでこう言った。
「とりあえず——、落ち着こうか?」
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