357人が本棚に入れています
本棚に追加
「⋯⋯ぼ、僕をはやく処刑してくださらないと、このままでは塩が混じった雨が降ります。僕が持っている『ギフト』は民を不幸にする能力なのです。黙っていて、ごめんなさい!」
頭を深く下げて謝った。それから砂漠の奥に向かって走り出す。
生きながらハゲタカに食べられるつもりだった。
——僕は、僕は生きていちゃいけないんだ!
泣きながら走っていく。
だけどすぐに後ろから、
「フウル、待て!」
がっしりと力強い手に止められた。
「離してください! 僕は処刑されないといけないんです!」
「処刑などしない、するわけがないだろう!」
力強く引き寄せられ、そのまますっぽりと広い胸の中に⋯⋯。
王の上着をかぶったままのフウルを、リオ・ナバ王はしっかりと抱きしめた。
「へ、陛下?」
「——我が国に恵みの雨を持ってきてくれた花嫁を、処刑するわけがないだろう?」
「だけど僕は、塩の雨を降らせてしまいます⋯⋯」
「塩など混じっていないぞ?」
リオ・ナバが手で雨を受ける。
たしかに今降っている雨に塩は混じっていなかった。
「⋯⋯でも、ナリスリア国では、僕が降らせる雨には塩が混じっていたんです」
最初のコメントを投稿しよう!