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「⋯⋯ぼ、僕をはやく処刑してくださらないと、このままでは塩が混じった雨が降ります。僕が持っている『ギフト』は民を不幸にする能力なのです。黙っていて、ごめんなさい!」  頭を深く下げて謝った。それから砂漠の奥に向かって走り出す。  生きながらハゲタカに食べられるつもりだった。  ——僕は、僕は生きていちゃいけないんだ!  泣きながら走っていく。  だけどすぐに後ろから、 「フウル、待て!」  がっしりと力強い手に止められた。 「離してください! 僕は処刑されないといけないんです!」 「処刑などしない、するわけがないだろう!」  力強く引き寄せられ、そのまますっぽりと広い胸の中に⋯⋯。  王の上着をかぶったままのフウルを、リオ・ナバ王はしっかりと抱きしめた。 「へ、陛下?」 「——我が国に恵みの雨を持ってきてくれた花嫁を、処刑するわけがないだろう?」 「だけど僕は、塩の雨を降らせてしまいます⋯⋯」 「塩など混じっていないぞ?」  リオ・ナバが手で雨を受ける。  たしかに今降っている雨に塩は混じっていなかった。 「⋯⋯でも、ナリスリア国では、僕が降らせる雨には塩が混じっていたんです」
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