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「いいんだよ。そうか⋯⋯。そうだったんだね、心遣いが嬉しいよ、ミゲル。ありがとう」  話していると、扉にノックが聞こえて、ほっそりとした赤毛の青年が入ってきた。  国王に使える侍従長のカルラだ。長い赤毛を後ろに垂らした姿は中性的でオメガと見間違うほどだが、ベータだった。 「あ、兄さん!」  ミゲルがパッと椅子から立ち上がった。 「城では侍従長と呼べと言っただろう?」  カルラはミゲルの兄だ。弟は子鹿のような雰囲気だが、兄の方はもっと落ち着いた静かな雰囲気をしている。  弟を厳しい視線でチラリと見ると、すぐに視線をやわらげてフウルに一礼した。 「フウルさま、お湯の用意が整いました。どうぞ、お入りください。さあ、ミゲル、フウルさまをご案内して——」 「はい、兄さん——、じゃなかった⋯⋯侍従長!」 「まったくおまえは⋯⋯」  ため息をついてカルラは出ていった。 「お兄さんと仲がいいんんだね」  ミゲルに案内されて廊下を歩きながら聞くと、ミゲルは大きくうなずいた。 「はい! いつも叱られてばかりですが、とても優しい兄です」
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