六 休暇

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 八月七日、土曜日、くもり。正午前。  真理と佐介は長野市内の自宅で火の元や戸締まりを確認し、駐車場で荷物を積み終えて車に乗った。 「どれくらいかかる?」 「一時間半くらいだね。奥山温泉に行った国道を、途中から山間へ入ってゆくからね」  佐介はカーナビに目的地の北信濃温泉郷を入力した。北信濃温泉郷は奥山温泉の手前だ。長野から二時間もかからない。 長野から奥山温泉へは、国道を利用するか、上信越道を利用するか、あるいはもう一つのルート・北信五岳道路の利用がある。  佐介は北信五岳道路(愛称は「上水内北部広域営農団地農道」)を通るコースを選んだ。  そのルートは、長野から北国街道を北上し、途中から北信五岳道路を走る。この道路からは東に、善光寺平と呼ばれている長野盆地の、長野市の北部。志賀高原。菅平高原を眺望できる。そして、この北信五岳道路は高速道路上信越道のインターチェンジを経て、国道を走り、北信濃温泉郷に至る。 「北信五岳道路にコンビニはないから、市内と北国街道で買い物するよ。  何を欲しい?」 「何も無し!去年と違って、忘れ物、無し!」  真理が声高らかに言った。
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