六 休暇

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「サスケ、どうした?」  妻の真理が、離れたデスクに居る佐介を見つめた。 「死亡広告が同じ地域から二件だ。妙だと思わないか?」  電話で済む指示を、田辺安文編集長が直々に社会部のデスク兼キャップの真理に伝えた。それなりの理由があるからだ、と佐介は理解している。 「妙でもねえべ。こっちは自殺だ。そしてこっちは酔っ払いの事故死だ・・・」  真理は実家がある北関東の方言でそう言ったものの、故人の年齢を見て事件性を臭わせる妙な気配を感じたが、話し続けた。 「今日から一週間は何も無い事を祈るべ。  去年は、奥山温泉の連続死亡事件で休みが潰れた。  編集長もそう思うべさ」  真理は指示を伝えに来た田辺安文編集長を見た。  昨年の夏休み、真理と佐介は遠縁の親戚・佐伯警部を助けて、奥山温泉で起きた連続死亡事件を解決し、『秘湯連続死亡事件』としてスクープしている。 「事件が無いのは良いことだが、新聞社としては寂しい面もある。複雑だな・・・」  田辺安文編集長は返答にこまって話を変えた。 「まあ、気をつけて休暇を楽しんできてくれ」 「はいよお!」  真理は妙な返答を返した。  田辺安文編集長は妙な顔で、では、頼むぞ、と言って社会部を出ていった。 『おそらく、田辺安文編集長は、真理と俺が行くところに事件有りだと思ってる』  佐介は、田辺安文編集長の思いをそう感じていた。
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