歯並びに一目惚れ

12/15
3227人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「……初めてみたいで可愛い」  耳元でクスッと囁く土屋さん。  もしかして既にバレてる?  だけど今更引き返せない。   「わっ」  突然抱き上げられて部屋に移動し、ふわりとベッドの上におろされた。  待って。まだ緊張とドキドキがおさまらなくて目の前がぐるぐるする。  そうこうしているうちに土屋さんはジャケットを脱ぎ始めて。 「先にシャワー浴びてもいい?」  そんな質問に声が出ず、頷いて了承すると土屋さんは微笑んでシャワールームに向かった。 「………………」  ……どうしよう!  土屋さんと、キスしちゃった!  まだ柔らかい感触と口内の熱が残ってる。  ……あんなに憧れていた土屋さんと、これからそれ以上のことを……。  ちらりと覗いた窓から見える夜景。  目が眩むようなシーツの白さ。  何もかもが私を高揚させる。  ……後悔はない。  むしろ好きな人と結ばれるなんて幸せなことだけど。  土屋さんは、一夜の遊びのつもりで私と過ごすの?  彼の心境が全くわからない。  それに、あんなに大きなことを言ってしまった手前、初めてだってバレないか不安だ。  複雑な気持ちのまま正座で待つ私を、戻ってきた土屋さんが笑った。 「なんでそんなに緊張してるの?」  ですよね。  ホステスだったら、もっと堂々としていなきゃ。  それにしても、お風呂上がりの土屋さんは色気が果てしない。  濡れた髪とバスローブからちらりと見える素肌にごくりと固唾を飲み込む。 「愛美ちゃんも入る?」 「は、い、そ、う、し、ま、す」 「大丈夫?」 「だ、い、じょ、う、ぶ」  まずいまずい。  もっとしっかりしなきゃ。  これから私は…… 「俺が洗ってあげようか?」 「きゃー!」  ついに心臓がオーバーヒートをし、ふらりとへたり込む。 「愛美ちゃん!?」  ……やっぱり、無理。 「大丈夫!?」  いきなり好きな人とワンナイトなんて、ハードルが高すぎた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!