歯並びに一目惚れ

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「ん……」  次に目が覚めた時には、部屋中真っ暗で。  一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなった。  困惑しながら起き上がると、ベッドの上で温かな布団に包まれていたことを知る。  ……隣には、寝息を立てている土屋さん。 「…………っ」  思わず叫びそうになるのを堪えた。  私、オーバーヒートして寝ちゃったの?  せっかくシャワーを浴びた土屋さんを放って。    ふと見ると、衣服は全く乱れていない。  土屋さん、寝ている女性に手を出すような人じゃなかった。  私をベッドへ運んでくれて、布団をかけてくれて。  すやすやと眠っている彼に胸が高鳴る。  ……益々好きになってしまった。  惜しいことをしたかも。  あともう一歩で、土屋さんと一線を越えられたのに。  寝ていることをいいことに、彼の隣に横たわってピッタリと身体を近づける。  一度だけ、背中にそっと口づけた。  朝になったらお別れかな?  そう思うと、この夜が明けることが怖くなる。 「……起きたの?」 「え!?」  まさか。  土屋さんはゆっくりと寝返りを打ち、私の方に振り返る。  起きてたの?  じゃあ、今私が触れたことも。 「そんなに緊張しないで。大丈夫。無理矢理襲ったりしないから」  優しく微笑む土屋さん。  紳士的で、本当に素敵な人。 「眠っていいよ。おやすみ」  そう言って私の髪を撫でる。  その仕草に逆に色気を感じて、眠れなくなってしまった。 「……もう一度だけ、キスしてくれませんか?」  馬鹿なことを言ってるってわかってる。  だけど名残惜しくて。  真っ暗闇でよかった。顔が赤くなっているだろうけど、気づかれない。  伸ばされた腕に頭をのせると、ぎゅっと抱き包まれる。  体温が気持ち良くて、自然と私も土屋さんを抱き締める。  二人の鼓動が肌を通して伝わる気がした。  それがとても、心地良い。  ゆっくり近づく唇。  啄むようなキスの後、深く口内を求め合った。  身体が弛緩して、宙に浮いているみたい。  彼の舌の感触がお腹の奥に響いて、堪らない焦燥感に悶えた。  漏れる吐息と微かな声が響く中、夢中になって土屋さんを求める。  次第に背中を撫でる彼の手つきが焦らすような動きになり、ファスナーがおろされるのがわかった。 「あ……お風呂入ってない」 「大丈夫だよ」  焦っているうちにどんどん服を脱がされる。  戸惑いはあるものの、恐怖は感じなかった。  むしろもっと、彼に触れたい。  彼に触れて欲しいと、身体中が疼いていた。
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