あなたの虜

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 順番にシャワーを浴びて、案内した寝室のベッドに二人横たわる。  土屋さんは既に上半身裸で、目のやり場に困った。  仰向けになった私に覆いかぶさる土屋さん。  尋常じゃない動悸が襲い、肩を動かして呼吸をする。 「愛美ちゃん……」  なんて色気がある人なんだろう。  その目に見つめられるだけで、全身に震えが止まらない。  触れるだけのキスをして、彼の愛撫が始まった。  指や唇が私の肌を滑る度、快感に吐息が漏れる。  ……今日こそ私、土屋さんに初めてを捧げられるのかな。  ……初めてだってバレないように、最後までできるんだろうか。  そんなふうに考えているうちに、ハッと気づいて目を開けた。 「土屋さん……」 「やっぱり怖い?」  優しく問いかけてくれる彼に、起き上がって首を振る。 「あの……私、持ってなくて。その……あれを」  恥ずかしくて名称が言えない。  口ごもる私に、土屋さんはピンときたように言った。 「……もしかして、これ?」  ズボンのポケットから取り出した実物に絶句する。  まさか持っていたなんて。  もしかして土屋さん、いつも持ち歩いてる?  ……ということは、他の女性ともこんな夜を。  途端にチクリと胸が痛んで、嫉妬心が芽生えた。 「土屋さん、女性とこういうことするの、慣れてますか?」  キョトンと目を丸くする土屋さん。  変な質問になってしまった。 「まあ……それなりには」  顔を赤らめる土屋さんに、益々妬いてしまう。 「……でも、愛美ちゃんは無理しないで。怖かったら途中でやめる。無理矢理なんてこと、しないから」  まるで子供扱いされているみたいで、ちょっと傷ついた。  私だってもういい大人なのに。  大人の女性として、魅力が足りないってことなんだろうか。 「……大丈夫です」  悲しくて情けなくて、意地を張って自分からティーシャツを脱いだ。  本当は震えているくせに。 「私だって、それなりに経験はあるんで」  そう言った瞬間、土屋さんの顔つきが変わった。 「……誰と?」  なんだか少し、怒っているような。 「それは……お客さんとか、も、元カレとか」  一切経験がないなんて今更言えない。  噓に噓を重ねて、本当にバカみたいだ。 「わっ!」  彼は黙って、勢いよく私を押し倒した。  眼差しは真剣で、少し怖く感じるくらい。 「……じゃあ、今日はちゃんと抱くね」 「土屋さん!?」 「早く俺のものにしないと」    再び彼の手が私を翻弄する。  今度は少し乱暴な手つきで、余計に快感を煽った。
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