あなたの虜

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「あっ……」 「慣れてるんじゃなかったの?」 「ちょ……まっ!」 「なんでそんなに初々しいのかな」  さっきから土屋さんは意地悪だ。  ほとんど休む暇もなく、次から次へと刺激の波が押し寄せてくる。  涙目で歯を食いしばり、時折淫らな声を漏らしながら快感に耐える。 「んん……」  特に、口の動きが色っぽくて。  舌で弄ばれたり、甘噛みされると身体はびくりと仰け反って、全身を大きく震わせるのだった。 「待って……」  やがて愛撫は下半身に移り、彼の指は私の足の付け根をゆっくりなぞる。  彼を求めて疼くその場所は、卑猥な音を立てて長い指を受け入れた。 「すごく狭いんだけど」  私の中をかき混ぜ、くすりと勝ち誇った笑みを浮かべる。 「ホントは男なんて知らないんじゃないの?」  恥ずかしくて目を逸らし首を振る。  すると彼の動きはもっと意地悪に、激しいものに変わった。 「ひ……!」  声が抑えられない。  じわりと涙が滲み、目の前の土屋さんがぼやけていく。  何度も指で弱いポイントを突かれ、最後にキスをされると、大きく痙攣して絶頂を迎えた。  乱れた姿を恥じらいながらも、快感の余韻に抗えない。  恍惚としながら息を整え、再び与えられた口づけに夢中になる。 「俺を受け入れてくれる?」  そんな言葉に力なく頷くと、彼は私を強く抱きしめ、身体を密着させた。  大きく足を広げるように促され、ゆっくり繋がっていく。  強い圧迫感と痛みを感じ、上手く息が吸えない。  強張る身体に、土屋さんは切ない声を上げた。 「力抜いて……」  そう言われても、身体が言うことを聞かなくて。 「痛い……」  ついに我慢できずに呟くと、彼の動きは止まった。 「……やっぱり初めてなんじゃない?」  もう取り繕う余裕もなくて、情けなく目を閉じ頷いた。  優しく髪を撫でてくれる土屋さん。 「いじめてごめん。今日はもう……」  彼の身体が私から離れようとした瞬間、猛烈な寂しさを感じしがみついた。 「……愛美ちゃん?」  今日は途中でやめてほしくない。  最後まで、土屋さんと…… 「お願い。やめないで」 「でも、」 「面倒ですか?」  怖くなって見上げると、土屋さんは真っ赤になり、私の中の彼もピクリと反応した。 「そんなわけない」  もう一度私を抱きしめ、耳にキスをする。 「嬉しくて頭がおかしくなりそう」  そんなふうに耳元で甘く囁かれると、身体の力がふにゃふにゃに抜けていく。  その瞬間、彼は私の奥を突いた。 「じゃあゆっくりしようね」  優しい声の通り、土屋さんはまるで繊細なものに触れるように、私の肌を丁寧に扱う。  その間にもゆっくりと穏やかな腰の揺らぎは続き、だんだんと痛みは気持ち良さに変わっていく。 「……痛くない?」 「はい……」  どこまでも私をいたわり、気遣ってくれる土屋さんのおかげで、恐怖や緊張は和らいでいた。  初めて知った。好きな人との行為は、こんなにも幸福なことなんだ。  優しく穏やかな温もりに包まれて、愛しさが込み上げる。 「壮平さん……」  いつも心の中で密かに呼んでいた彼の名前を、ドサクサに紛れて漏らしてしまう。  彼は嬉しそうに微笑み、とろけるような深い口づけをくれた。  どれくらい時間がたったんだろう。  長い長い、たっぷりの愛撫の後、次第に律動は少しずつ速まっていく。 「ごめん……もう我慢できない」  余裕のない彼の表情が新鮮で、私を求めてくれているような気がして嬉しかった。  ぎゅっと背中に腕を回し、動きに合わせて嬌声を漏らす。  二人の甘い吐息と肌が当たる音だけが響き、余計に欲を煽った。 「愛美……愛美っ……」  何度も私の名前を呼んでくれる土屋さんは、一際深く私の奥を突いた瞬間、びくりと身体を痙攣させて切ない声を上げた。  その声があまりにも色っぽくて、強い刺激と共に私の身体中を痺れさせる。  ぐったりと力が入らない汗ばんだ身体で抱きしめ合って、私達は余韻に浸りながらキスを続けた。  まだ快感の波が引かない。  ……初めて好きな人と、一線を超えられた。  喜びと感動に心が満ち足りていくのを感じながら、彼に包まれる心地良さに目を閉じた。
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